まず、辛く暗く、そして苦しい現実を先に示します。
「日本の根管治療の平均レベルは、各国と比べ最底辺である」
「日本の根管治療の平均的な成功率は40%以下である」
これは、日本の保険制度に縛られた中で、多くの歯科医師が良い仕事ができないことも大きな要因です。
「国や制度が良くない」と文句を言うのは簡単ですが、現在の私たちの問題解決にはなりません。
今、私たちがどうするかが重要です。
1)日本の根管治療のレベルは最底辺?
まずはこちらの図をご覧ください。これは簡単に言うと、「根管治療がうまくいかないまま残されている
歯の割合」です。つまりどういうことかと言うと、「日本の根管治療の平均的な成功率は、どれだけ高く
見積もっても40%以下である」と言うことです。この論文中でも、「保険制度の制約で治療環境を整えら
れない」、「日本の保険制度を変えることは厳しい」と述べてあります。
事実、日本の保険制度における根管治療の報酬はびっくりするほど低いのです。下図は各国の根管治療の
治療費と、物価の基準としてハンバーガー100食分の費用とを比較しています。保険点数をもとにした
診療報酬がいかに低いかということが分かります。この図を、どのように解釈しますか?
「日本は、こんなに安く根管治療が受けられる良い国だ」と読みますか?
「安い報酬で根管治療をしなければいけない、日本の歯科医って大変だ」と読みますか?
それとも…?
「日本の保険治療では、安かろう悪かろうの治療しか受けられない」と読みますか?
「赤字な根管治療はボチボチにして、駄目ならインプラントの方が良さそうだな」と読めませんか?
2)欧米こそが正義なのか?
例えば米国などでは、「10万円払えない人は、根管治療を受けるまでもなく抜歯」です。大学病院で
学生や研修生の実習台として治療を安価に受けられる制度もあり、これは非常に良い制度だと思います。
その点日本では、成功率が40%以下ではありますが、非常に安価に根管治療が受けれられます。
日本の一部の根管治療専門医には「アメリカの専門医や大学の言っていることは正しい」という風潮が
ありますが、私は必ずしもすべてが「科学的に正しい」とは思いません。一見して「科学」的にみえる
意見やスタンスの裏に、「契約社会」「訴訟社会」「分業社会」が生んだ歪みのようなものが見え隠れして
います。科学は国境や時代を超えて普遍的なものでは必ずしもないのです。日本に生まれ日本で暮らして
いる私達には、私達のベストがあるのではないでしょうか。
虫歯になった歯を研究するための標本は、
治療を受けられずに抜いた歯で作られている。