かい歯科クリニックかい歯科クリニック 谷町九丁目、上本町の歯科医院

かい歯科クリニック

MENU

歯髄保存療法

VPT

WEB予約

VPT歯髄保存療法

歯髄とは?

歯髄とは、歯の内部にある神経・血管の集合体で、歯の神経とも呼ばれます。痛みなどを感じるだけで
なく、歯に栄養・水分を供給する重要な組織です。この歯髄を守る「歯髄保存療法」に力を注いでいます。
日本では大きい虫歯があると、すぐに神経が抜かれてしまいます。そして患者さんも、簡単にその治療を
受け入れます。その重大さの認識が歯科業界全体として低いため、世間にあまり浸透していないようです。

歯髄は絶対に残したほうが良い!根管治療した歯に潜む3つのリスク

  • 1)根管治療した歯は折れやすい
  • 2)虫歯ができても気づかない
  • 3)根尖病変の再発
1)根管治療した歯は折れやすい

歯髄は歯に栄養・水分を供給する役割を担っています。それがなくなると、歯がもろくなってしまいます。
生木の枝は折ろうとしてもなかなか折れません。地面に落ちている枯れ枝は、簡単に折れてしまいます。
歯髄のある「生活歯」=「生木の枝」、根管治療した「失活歯」=「枯れ木の枝」なのです。私たちが最も
恐れることは、歯が根の先まで折れてしまう「歯根破折」です。折れた歯を治す技術は確立されておらず、
抜歯せざるを得ない状況になることがほとんどなのです。

2)虫歯ができても気づかない

歯が痛いことで「虫歯じゃないか?」と気づけるのも、歯髄があるおかげです。痛みを感じることは、体を
守る上で非常に重要な役割です。根管治療した歯が虫歯になっても、ほとんどの場合は気づきません。
再び根管内で細菌が増殖して根の先で炎症を起こすか、虫歯が進行しきってボロボロになるまで、つまり
最悪の状況になるまで自身で気づくことができないのです。

歯
3)根尖病変の再発

日本の根管治療の成功率は平均40%未満です。専門医の初回の根管治療の成功率は、およそ90%と
言われています。専門医でも、だいたい10本に1本は再発するのです。そして、再発した歯に対しての
「再根管治療」の成功率は60%程度とガクッと落ちます。治らない場合は歯の部分切除や、抜歯となって
しまいます。難しいことはどんなに極めても難しいのです。

歯

抜髄と歯髄保存の境界線 歯髄保存療法の可能性

一般的に、神経を抜く「抜髄」をするパターンは以下のとおりです
  • ①ある程度大きい虫歯があり、治療後に痛みが出るかもしれないとき
  • ②歯髄に達しそうな虫歯があり、はじめから保存を困難と判断したとき
  • ③虫歯を取っている途中で歯髄が露出(露髄)してしまったとき
  • ④虫歯の治療後に激しい痛みが出てしまったとき
  • ⑤はじめから激しい痛みを伴う歯髄炎を起こしている、
    もしくは歯髄が死んでいるとき

この中で神経を抜かなければいけないパターンは④と⑤のみです。最近では少しずつ減ってきたとはいえ、日本では①や②の、本当ならば不必要だったかもしれない抜髄があまりにも多いと言わざるを得ません。

当院では①や②のパターンで神経を抜くことはほとんどありません。

虫歯をマイクロスコープ下で慎重に取り除くため、③の不必要な露髄が起きる可能性も低いです。 また、実際に歯髄まで虫歯が達していたとしても、露出した歯髄を保護する方法を取るので、③の状態でも歯髄の保存を試みることがほとんどです。

歯髄は熱や刺激に弱く、また細菌が侵入することでも炎症を起こし、死んでしまいます。また、虫歯の取り残しがあっても、のちのち細菌が歯髄に達してしまい、炎症を起こしてしまいます。時間をかけた繊細で慎重な器具操作により、④が起きる可能性をかなり低くできます。

⑤のパターンはさすがに仕方ありません。しかし、若年者の歯髄はパワフルなため、当院の方針の理解やリスクの了解さえ得られれば、⑤でも歯髄保存を試みることもあります。今、様々な研究や技術の発展により歯髄保存の可能性が広がっています。

当院の歯髄保存治療の実際を同業者に見ていただく機会があると、「こんな虫歯でも歯髄が残るのか」と驚かれることも少なくありません。治療している自分でも驚くことがあります。歯髄保存には、まだまだ多くの可能性が眠っているように感じています。

当院の歯髄保存療法

当院の歯髄保存療法を、実際の治療手順とともに紹介します。 以下が当院の歯髄保存療法の4大要素です。各々が非常に密接に関係していて、どれかひとつ欠けただけでも総崩れになってしまいます。

  • ①診断と説明
  • ②治療時間の確保
  • ③設備・道具・材料
  • ④特殊な覆髄剤でコーティング
①診断と説明

何においてもまず診断です。レントゲンはもちろん、さまざまな臨床検査を行います。
特に電気歯髄診(EPT)により、その歯の現時点での生死と、部分的に弱っていないかを調べます。また、
日常生活における痛みの程度も重要な要素です。診査項目で問題があると、成功率が下がります。それを
分析し、正直にお伝えした上で、この治療を受けるかどうかを選んでいただきます。

歯
②治療時間の確保

大きい虫歯を慎重に、かつ確実に取り除くには、どうしても時間がかかります。一般的な保険治療では、
時間をかけないから意図せず歯髄を傷つけてしまうことや、虫歯の取り残しが起きるのです。虫歯の深い
ところ、歯髄に近いところに差し掛かるほど繊細さが必要になってくるため、当院では露髄の可能性が
あるような大きい虫歯には、60分の予約を確保します。

歯
③設備・道具・材料

まずマイクロスコープ治療が前提です。マイクロスコープ治療では歯髄が近づいてくると、うっすらと
透けて視えてきます。肉眼では歯髄が近づいてくるどころか、露出したことに気づかないこともあります。
唾液が入り込まないようにラバーダムやzooという器具で唾液をガードすることも非常に重要です。
歯髄に非常に近いところでは、高速回転するようなドリルでは簡単に歯髄が露出してしまいます。そこで、
低速回転制御ができるモーターを使い、さらに慎重に超音波器具や手用器具を状況によって切り替えます。
歯髄に刺激を与えないように繊細に治療を進めていきます。

歯
④特殊な覆髄剤でコーティング

虫歯が取り終わりました。歯髄のギリギリ手前で虫歯を取り終わった場合や、露出した歯髄には、特殊な
覆髄剤でコーティングをします。「MTA」や「スーパーボンド」という材料を状況によって使い分けます。
現時点の当院での生存率は96%程度と、専門機関の統計よりやや高い数字が出ています。

歯の写真
実際の治療
step1

ほぼ歯髄に到達しています。

step2

非常に大きな虫歯。

step3

虫歯の部分を青く染めながら慎重に取り除きます。

step4

中心の青い部分のすぐ向こうに歯髄があります。

step5

歯髄を傷つけないように最後の虫歯を取り除きます。

step5

覆髄剤でコーティング。

step5

プラスティックで補強します。

歯髄保存治療(VPT)の症例集はこちら

材料や技術の進歩により、ひと昔前では絶対に残せなかった歯髄でも残せるケースが出てきました。
教科書的には直接覆髄の適応は

  • 偶発露髄(歯を削っている最中に起こった露髄)
  • 細菌感染が起こっていないもの(炎症が起きていないこと)
  • 露髄面の直径が2mm以下のもの

とされています。もちろん、その条件での直接覆髄が最も安全かつ確実に行えるため、決して間違いではありません。

しかし、根管治療、ひいては歯牙保存を突き詰めていくと「歯髄は可能な限り残したほうが良い」「最良の根管充填剤は歯髄である」(※どんな根管治療も生きた歯にはかなわない)という話に収束します。

当院では、感染を取り切った時点での露出歯髄の大きさや、炎症の状態によって歯髄保存療法(VPT)をカテゴリーに分け、それぞれの経過を長期的に観察しています。ここに載せているのは少なくとも1年以上無事経過したものです。

その中で視えてきたものも、いまだに未知数なものもあります。この分野は世界的に見ても非常にホットなので、ここ5年ほどで自分の中での考え方ややり方がずいぶん変わってきました。
しかし「なんとかして目の前の歯の歯髄を残したい」という意思だけは、5年前から、なんなら研修医のころから変わりません。

歯髄保存療法

虫歯の大きさ、歯髄の状態による分類

治療法 直接覆髄 部分断髄 歯頚部断髄
治療イメージ 直接覆髄 部分断髄 歯頚部断髄
感染の状態 歯髄に到達する感染 歯髄の断端に炎症 歯髄の一部が壊死
成功率 95%以上 95%前後 90%前後
費用(前・小臼歯) 33,000
(税込36,300)
43,000
(税込47,300)
48,000
(税込52,800)
費用(大臼歯) 38,000
(税込41,800)
48,000
(税込52,800)
53,000
(税込58,300)

※この費用は2024年3月時点での費用のため、詳細は料金表のページを参照してください。

歯髄保存療法を通して共通のリスク

  • 100%歯髄が生き残ってくれるとは限らない(当院統計で96%。各々の歯髄の健全度、炎症の有無によって変動)
  • 術後に歯髄が壊死した場合、根管治療の難易度が上がる傾向がある (同じイニシャルトリートメントでも、病変の有無によって成功率が変わるため。また根管が細く狭くなってしまうこともあるため)
  • 術後に失活した場合、イニシャルトリートメントの費用がかかる。あまりに分が悪い勝負の場合は、無理に挑戦すると予後も悪くなり費用も余分にかかってしまう。

直接覆髄(不顕性露髄)

直接覆髄

このパターンの特徴とリスク

  • 生存率95%以上(ごく稀に治療数年後に失活する)
  • 歯髄寸前までの感染
  • 歯質の残り方によってはダイレクトボンディングなどの部分的な修復治療が可能

症例①

直接覆髄(不顕性露髄)症例①

  • ①歯髄に近い大きな虫歯があります。
  • ②相当な広がり方をしていました。
  • ③慎重な操作の結果、歯髄目前で除去完了。
  • ④歯冠の丈が低い歯には、グルーヴ形成した
    ゴールド7/8冠を推奨しています。
  • ⑤装着後2年、定期的なレントゲンや診査でも異常なしです。
費用
歯髄保存療法大臼歯(直接覆髄) 30,000
(税込33,000)
ゴールドクラウン 135,000
(税込148,500)

※この費用は2024年3月時点での費用のため、詳細は料金表のページを参照してください。

症例②

直接覆髄(不顕性露髄)症例②

  • ①歯髄に近い大きな虫歯があります。
  • ②慎重な操作の結果、歯髄目前で除去完了。
  • ③ギリギリのところで露髄(歯髄に穴が開き露出すること)を回避できたため、ダイレクトボンディングで修復をしました。
  • ④術後、痛みや違和感なし。歯髄間近だったことが分かります。
費用
歯髄保存療法大臼歯(直接覆髄) 30,000
(税込33,000)
ダイレクトボンディング 30,000
(税込33,000)

※この費用は2024年3月時点での費用のため、詳細は料金表のページを参照してください。

このケースにおけるリスク

  • レジンで修復している部分が大きく、欠けた場合はクラウンが必要になる
  • ダイレクトボンディングは修復範囲によって適応から外れ、希望されても不可能なこともある

直接覆髄

直接覆髄

このパターンの特徴とリスク

  • 生存率95%(稀に治療数年後に失活する)
  • 髄角に達する感染
  • 特に大臼歯ではクラウンによる修復治療を推奨する
  • 歯髄からの出血や、歯のヒビがみられると、やや生存率が下がる

症例①

直接覆髄 症例①

  • ①右下5に歯髄に近い虫歯があります。
  • ②中で大きな広がりをみせています。
  • ③慎重に虫歯を取りましたが、既に歯髄内に
    感染が達していました。
  • ④MTA充填後、ダイレクトボンディングにて
    直接修復を行いました。
費用
歯髄保存療法小臼歯(直接覆髄) 25,000
(税込27,500)
ダイレクトボンディング 30,000
(税込33,000)

※この費用は2024年3月時点での費用のため、詳細は料金表のページを参照してください。

このケースにおけるリスク

  • 今回は歯質削除量をおさえるためダイレクトボンディングにしているが、露髄している場合はクラウンにしたほうが歯髄の生存率はやや高くなる。

症例②

直接覆髄 症例②

    • ①右上7の金属の下に大きな虫歯があります。
    • ②露出した歯髄を保護します。
    • ③仮歯の状態で3ヶ月待機し、無事を確認。
      ゴールド4/5冠を装着しました。
    • ④仮止め(仮着)して半年が経過しました。
      ゴールド修復は仮着が可能なため、なにか
      起きたときもすぐに外して確認が可能です。
      そこからさらに1年が経過し、仮着を本接着にしました。
費用
歯髄保存療法大臼歯(直接覆髄) 30,000
(税込33,000)
ゴールドクラウン 135,000
(税込148,500)

※この費用は2024年3月時点での費用のため、詳細は料金表のページを参照してください。

症例③

直接覆髄 症例③

  • ①大きな虫歯。レントゲン上では虫歯は歯髄
    まで届いてないように見えますが…
  • ②若年者の虫歯は、レントゲンイメージより
    実際には大きい傾向があります。
  • ③歯髄を傷つけないように感染源を取り切り、
    露出した歯髄を保護します。
  • ④ゴールド7/8冠を仮着しました。
  • ⑤仮着から半年、歯髄保存治療からは10ヶ月。
    経過良好。
    そこからさらに2年後、無事を確認し仮着を本装着にしました。
費用
歯髄保存療法大臼歯(直接覆髄) 30,000
(税込33,000)
ゴールドクラウン 135,000
(税込148,500)

※この費用は2024年3月時点での費用のため、詳細は料金表のページを参照してください。

症例④ 小臼歯の歯髄保存療法2例

直接覆髄 症例④-1

直接覆髄 症例④-2

費用
歯髄保存療法小臼歯(直接覆髄) 25,000
(税込27,500)
ゴールドクラウン 135,000
(税込148,500)

※この費用は2024年3月時点での費用のため、詳細は料金表のページを参照してください。

症例⑤ 大臼歯の歯髄保存療法2例

直接覆髄 症例⑤-1

直接覆髄 症例⑤-2

費用
歯髄保存療法大臼歯(直接覆髄) 30,000
(税込33,000)
セラミッククラウン 125,000
(税込137,500)

※この費用は2024年3月時点での費用のため、詳細は料金表のページを参照してください。

部分断髄

部分断髄

このパターンの特徴とリスク

  • 成功率95%前後(10%は術後数年以内に失活)
  • 一部歯髄内に達する感染
  • 歯髄の一部に炎症が生じているため、重症度はやや高い

症例① 小臼歯の断髄症例

部分断髄 症例①

↓さらに3年後...無事を確認

部分断髄 症例① 3年後

  • ①左下5に歯髄に近い大きな虫歯がみられます。
  • ②内部では想像以上の虫歯が広がっています。
  • ③歯髄内にも感染があり、断髄を行いました。
  • (唾液が侵入しないようZooという機械を
    使用)
  • ⑤MTAにて歯髄保存を試みます。
  • ⑥仮歯で3ヶ月経過後、e.maxクラウンで修復。
費用
歯髄保存療法小臼歯(部分断髄) 30,000
(税込33,000)
セラミッククラウン 125,000
(税込137,500)

※この費用は2024年3月時点での費用のため、詳細は料金表のページを参照してください。

症例② 大臼歯の部分断髄症例

部分断髄 症例②

  • ①右下7、右下6に2本連続で大きい虫歯
  • ②右下7歯髄保存療法(部分断髄)
  • ③右下6歯髄保存療法(部分断髄)
  • ④仮歯にして3か月後、e.maxクラウンを装着
  • ⑤そこから2年、レントゲン的にも症状的にも無事に経過
費用
歯髄保存療法大臼歯(部分断髄) 35,000×2
(税込38,500×2)
セラミッククラウン 125,000×2
(税込137,500×2)

※この費用は2024年3月時点での費用のため、詳細は料金表のページを参照してください。

症例③ 大臼歯の部分断髄症例

部分断髄 症例③

  • ①右上6に歯髄に近い大きな虫歯がみられます。
  • ②歯髄直前でも、まだまだ虫歯が残っています。
  • ③歯髄内にも感染があり、断髄を行いました。
  • ④仮歯で3ヶ月経過後、e.maxクラウンで修復。
費用
歯髄保存療法大臼歯(部分断髄) 35,000
(税込38,500)
セラミッククラウン 125,000
(税込137,500)

※この費用は2024年3月時点での費用のため、詳細は料金表のページを参照してください。

症例④ 大臼歯の部分断髄4症例

部分断髄 症例④-1

部分断髄 症例④-2

部分断髄 症例④-3

部分断髄 症例④-4

ここまで読んだ方なら、見方もだいぶわかってきていると思います。ステップは上の症例と全く同じです。

費用
歯髄保存療法大臼歯(部分断髄) 43,000
(税込47,300)
セラミッククラウンorゴールドクラウン セラミッククラウン:
125,000
(税込137,500)

ゴールドクラウン:
135,000
(税込148,500)

※この費用は2024年3月時点での費用のため、詳細は料金表のページを参照してください。

症例⑤ 連続する2歯の部分断髄

部分断髄 症例⑤-1

部分断髄 症例⑤-2

部分断髄 症例⑤-3

部分断髄 症例⑤-4

  • ①右下の奥歯2本に、非常に大きな虫歯がみられます。大型の医療法人にて自費の歯髄温存療法を提案され、どうせなら実績ある専門医院にて受けたいとの希望で当院に来院されました。
  • ②6番目の歯の部分断髄。
  • ③7番目の歯の部分断髄。安易な歯頚部断髄は行いません。
  • ④半年後、セラミッククラウンとゴールドクラウン装着。
  • ⑤さらに1年半後、症状もなく、X線像も正常です。
費用
歯髄保存療法大臼歯(部分断髄) 48,000
(税込52,800)
セラミッククラウン(e.max) 125,000
(税込137,500)
ゴールドクラウン 135,000
(税込148,500)

※この費用は2024年10月時点での費用のため、詳細は料金表のページを参照してください。

症例⑥ 「他院で歯髄温存療法+セラミック治療をしたが、すぐに割れた上に痛みが出てきた」

部分断髄 症例⑥-1

  • ①「他院で自費の歯髄温存療法ののちにセラミッククラウンを装着したが、セラミックはすぐに割れた上に痛みが出てきた。」とのことで来院されました。ご家族が歯科関係者のようで、なんとか抜髄を回避するために色々とサーチしてくれたとのことです。
  • ②まず「なぜすぐに割れてしまったか?」ですが、歯の丈の低さと噛み込みの深さが重なり、セラミックの厚みが足りなかったことが原因と思われました。そしてMTAセメントが表面に露出してきたことによるリーケージが痛みが出てきた原因と思われます。
  • ③残っている虫歯を除去しMTAセメントを除去すると、炎症歯髄がみられました。健全歯髄が見えるまで部分的に断髄を行います。
  • ④外観はセラミックで審美性を保ちつつ、噛む面は白金加金で頑丈さと耐久性を併せ持つ「咬合面メタルのメタルボンド」装着。
  • ⑤1年半後、症状も異常もないまま経過しています。

※術前CTでは、根の先に炎症による病変が起きかけていましたが、その1年後に撮ったCTではそれが消えています。

費用
歯髄保存療法大臼歯(部分断髄) 48,000
(税込52,800)
メタルボンド(咬合面メタル) 145,000
(税込159,500)

※咬合面メタルのメタルボンドを選択することはごく稀です。

※この費用は2024年10月時点での費用のため、詳細は料金表のページを参照してください。

症例⑦ 「銀歯を入れた直後から痛い」

部分断髄 症例⑦-1

  • ①「最近奥の歯に銀歯をいれたが、その直後から痛い。神経を抜くと言われたがなんとか残したい」とのことで来院されました。
  • ②虫歯の大部分が取り残されていました。中途半端に真面目な歯科医師が虫歯を除去すると露髄→抜髄はあきらかなので、取り残しが多くて助かっている症例とも言えます。
  • ③一部歯髄で炎症が起きていたので、部分断髄し、MTA充填。
  • ④半年後、ジルコニアクラウンを装着。
  • ⑤さらに1年後、症状もなく、X線像も正常。
費用
歯髄保存療法大臼歯(部分断髄) 48,000
(税込52,800)
セラミッククラウン(ジルコニア) 135,000
(税込148,500)

※この費用は2024年10月時点での費用のため、詳細は料金表のページを参照してください。

歯頚部断髄

歯頚部断髄

このパターンの特徴とリスク

  • 成功率90%前後
  • 歯冠部歯髄が炎症・壊死
  • 歯髄の生死の判定が非常に微妙なため、不確定かつ時間がかかる
  • 治療前の症状が激しい歯だとトライすらできないこともある
    その場合、自費の根管治療となる
  • 術後に歯髄壊死が認められた場合は自費の根管治療となる

症例① 大臼歯歯頚部断髄

歯頚部断髄 症例①

  • ①右下6に自発痛をともなう非常に大きな虫歯があります。
  • ②表面を水で流しただけで歯髄が見えてきました。
  • ③歯髄ではすでに炎症が起きています。炎症歯髄を除去します。
  • ④おそらく健全であろう歯髄のところまで断ち切り、止血します。
  • ⑤MTAで歯髄を保護し、封鎖します。
  • ⑥半年ほど仮歯で様子をみて、セラミッククラウンを装着しました。
費用
歯髄保存療法大臼歯(歯頚部断髄) 40,000
(税込44,000)
セラミッククラウンorゴールドクラウン セラミッククラウン:
125,000
(税込137,500)

ゴールドクラウン:
135,000
(税込148,500)

※この費用は2024年3月時点での費用のため、詳細は料金表のページを参照してください。

症例② 大臼歯歯頚部断髄

歯頚部断髄 症例②

  • ①右上6にびっくりするほど大きな虫歯があります。
  • ②パッと見た目ではキレイなのですが、中ではものすごい虫歯です。
  • ③歯髄ではすでに炎症が起きています。炎症歯髄を除去します。
  • ④おそらく健全であろう歯髄のところまで断ち切り、止血します。
  • ⑤MTAで歯髄を保護し、封鎖します。
  • ⑥10か月ほど仮歯で様子をみて、セラミッククラウンを装着しました。
  • ⑦根の先に異常所見などはみられません。
費用
歯髄保存療法大臼歯(歯頚部断髄) 40,000
(税込44,000)
セラミッククラウンorゴールドクラウン セラミッククラウン:
125,000
(税込137,500)

ゴールドクラウン:
135,000
(税込148,500)

※この費用は2024年3月時点での費用のため、詳細は料金表のページを参照してください。

症例③ 大臼歯歯頚部断髄を断念した症例

歯頚部断髄 症例③

  • ①右下6に大きい虫歯、噛むと痛い、熱いもので痛いという症状は化膿性歯髄炎を疑わせるものですが、若さにかけて試みます。しかしすでに根の先に黒い影がみえているため、歯髄の出血が止まらなければ根管治療になると説明しています。
  • ②歯髄に近い所まで虫歯を取ると、歯髄がピンクに透けてみえます。
  • ③激しく出血してきます。歯頚部断髄に切り替えます。
  • ④歯髄の内部ではすでにしっかり炎症が起きており、止血困難です。
  • ⑤この時点で歯頚部断髄は限りなく成功率は低いと判断し、本人の了解をいただき根管治療に踏み切りました。
    不快症状はすぐに消え、根管充填後セラミッククラウンを装着しました。
費用
歯髄保存療法大臼歯(歯頚部断髄) 中止 0
イニシャルトリートメント~歯台築造 105,000
(税込115,500)
セラミッククラウン 125,000
(税込137,500)

※この費用は2024年3月時点での費用のため、詳細は料金表のページを参照してください。

症例④ すでに歯髄炎を起こしている歯の歯髄保存

歯頚部断髄 症例④

  • ①自覚症状はまったくありませんが、非常に大きな虫歯です。
  • ②見た目には穴など空いていないのに、中ではこんなにも広がっています。若年者のHidden caries(隠れた虫歯)は自力での発見は困難です。
  • ③歯髄に達した瞬間から、ものすごい出血です。症状や術前診査からは正常歯髄にしか見えなかったのですが、すでに歯髄炎が起きてしまっていることが分かります。
  • ④断髄止血に7分かかる様なシビアな状態でしたが、MTAにて覆髄
  • ⑤術後1週間、症状なし、歯髄の生活反応、X線所見も正常です。
  • ⑥さらに1年後も異常なし。念のためCTも撮影したが、正常像です。
費用
歯髄保存療法大臼歯(歯頚部断髄) 48,000
(税込52,800)

※現時点ではレジン仮充填のまま経過しているため、クラウンは無し

※この費用は2024年3月時点での費用のため、詳細は料金表のページを参照してください。

症例⑤ 歯髄再生?根尖病変ができている歯の歯頚部断髄

歯頚部断髄 症例⑤

  • ①打診痛や安静時の違和感など歯髄炎or壊死を疑わせる症状。X線でも根尖部に病変様の透過像(黒い部分)がみられます。
  • ②炎症・壊死歯髄を除去し、断髄面にはMTA充填して1年後。症状なし、初診時にあったX線透過像も消失しています。
  • ③CTで術前・術後を比べても、根尖病変像が消えています。
  • ④セラミッククラウンを装着。
費用
歯髄保存療法小臼歯(歯頚部断髄) 43,000
(税込47,300)
セラミッククラウン 125,000
(税込137,500)

※この費用は2024年3月時点での費用のため、詳細は料金表のページを参照してください。

症例⑥ 海外から歯髄保存しに来院、しかしすでに上顎洞にまで炎症が…

歯頚部断髄 症例⑥

  • ①カナダの専門医院にて「根管治療しなければならない」と診断を受け、はるばる来院されました。すでに歯髄内にはセメントが充填されています。症状は無いが根尖には透過像(黒い部分)。
  • ②セメントを除去した時点で、壊死・炎症歯髄が見られました。
  • ③さらに踏み込んで断髄したところで健全歯髄らしき部分が見られたため、MTAにて歯髄保存を試みました。
  • ④半年後に再び来日いただき、歯髄の無事を確認して補綴治療
  • ⑤周囲の大きな虫歯も含めて複数本治療しましたが、全て無事。
  • 、⑦初診時と完了時のCT比較。⑥では上顎洞の炎症像(黄色の楕円内のグレーの部分)、⑦では根の先の病変が消えています。
費用
歯髄保存療法大臼歯(歯頚部断髄) 48,000
(税込52,800)
セラミッククラウン 125,000
(税込137,500)
ダイレクトボンディング(右上4.5.7) 38,000×3
(税込41,800×3)

※この費用は2024年3月時点での費用のため、詳細は料金表のページを参照してください。

症例⑦ 根尖病変様透過像がある歯の歯髄温存療法

歯頚部断髄 症例⑦

  • ①「3本の歯の神経を抜かなければいけない」と言われたとのことで来院されました。
    3本とも大きな虫歯で、特に犬歯は歯髄感染により根の先に透過像(黒い部分)がみられます。
  • ②3本とも歯髄保存に成功し、1年経過後のX線写真です。犬歯にみられた根尖部の透過像は消失しています。
費用
歯髄保存療法前歯(歯頚部断髄) 43,000
(税込47,300)
歯髄保存療法小臼歯 30,000×2
(税込33,000×2)
セラミッククラウン(小臼歯2本) 125,000×2
(税込137,500×2)

※この費用は2024年3月時点での費用のため、詳細は料金表のページを参照してください。

症例⑧ 不可逆性歯髄炎を起こしている歯を断髄により歯髄保存

歯頚部断髄 症例⑧

  • ①「熱い物を食べると痛い、噛むと痛い、打診痛もある歯ですが、なんとかなりませんか?」と、歯科医からの依頼紹介でした。デンタルx-p・CTでも、歯髄炎による上顎洞の変性がみられ、かなり厳しい条件でしたが、根管治療前提でトライすることに。
  • ②歯髄直前の部分でもかなりの感染が残っている段階で露髄。化膿性の炎症を起こしている歯特有の出血がみられたので、健全らしき歯髄が見えるまで断髄し、止血、MTAを充填しました。
  • ③かなり長めの経過観察期間を経て、セラミッククラン装着。デンタルx-p・CTでも上顎洞の炎症所見がきれいに消えています。経過観察中も電気歯髄診は正常反応、痛みも消えています。
費用
歯髄保存療法小臼歯(歯頚部断髄) 43,000
(税込47,300)
セラミッククラウン(小臼歯2本) 125,000
(税込137,500)

※この費用は2024年3月時点での費用のため、詳細は料金表のページを参照してください。

症例⑨ 小さな穴からできた大きな虫歯、歯髄炎の再生歯内療法

歯頚部断髄 症例⑨

  • ①「冷たいもの、熱いものを飲食すると痛い、噛むと痛い、夜間に痛くなる」いわゆる不可逆性歯髄炎の症状で、X線写真をみても根の先に病変ができかけています。10代のパワフルな歯髄に期待し、リスク覚悟で歯髄保存療法を試みることになりました。
  • ②キレイな見た目の歯の中に、こんなに大きな虫歯が潜んでいます。虫歯を除去し歯髄に達した段階で、歯髄からは激しい出血がみられ、やはり歯髄炎をおこしていることが分かります。そこから炎症を起こしていない(であろう)歯髄組織が出てくるまで歯髄を切断します。
  • ③痛みがなくなったため仮歯を作り1ヶ月後にCTを撮影しました。治療した歯の状態を確認するついでに、7番目の歯がその奥の親知らずによって外部吸収(歯が外側から溶けている状態)を起こしている疑惑があったからです。
  • ④悪い予感ほどよく当たるもので、案の定外部吸収を起こしていました。この吸収を起こしている歯を抜き親知らずを引っ張り上げて矯正し、今の7番目の歯の位置に移動させる計画を提案し、知り合いの専門性の高い先生に依頼しました。半年後、順調に歯が移動しています。
  • ⑤さらに1年後、セラミッククラウン(e.max)を装着。
  • ⑥そこからさらに1年(歯髄保存療法施術からは3年)、両方の歯が順調に経過しています。
費用
歯髄保存療法小臼歯(歯頚部断髄) 48,000
(税込52,800)
セラミッククラウン(e.max) 125,000
(税込137,500)

※この費用は2024年10月時点での費用のため、詳細は料金表のページを参照してください。

症例⑩ すでに歯髄、根尖歯周組織で炎症が起きている歯のVPT

歯頚部断髄 症例⑩

  • ①「2年前に治療した歯が、噛むと痛い、熱いものを食べると痛い」とのことで来院されました。打診(歯をノックして行う診断)でも痛みを感じていましたが、電気歯髄診断は正常反応。チャレンジングですが、理解の高い方だったのでトライすることに。
  • ②セラミックインレーを除去すると、虫歯がみられました。
  • ③歯髄に達した時点で炎症性の出血がありました。正常歯髄が出てくるまで深く切断、MTAを充填しました。
  • ④痛みがおさまったので仮歯にして経過観察。
  • ⑤少し長めの半年経過観察後、セラミッククラウン装着。
  • ⑥初診時のCTと治療後のCT。初診時は根尖周囲だけでなく、上顎洞(副鼻腔)にも炎症がみられましたが、治癒しているのが分かります。
費用
歯髄保存療法小臼歯(歯頚部断髄) 48,000
(税込52,800)
セラミッククラウン(e.max) 125,000
(税込137,500)

※この費用は2024年10月時点での費用のため、詳細は料金表のページを参照してください。

症例⑪ 歯頚部断髄後、CRにて修復した症例

歯頚部断髄 症例⑪

  • ①銀歯の下に非常に大きな虫歯ができています。
  • ②部分断髄の予定でしたが、歯髄の炎症が思いのほか強く、歯頚部断髄に切り替えました。ここで止血が完了しました。
  • ③MTAを充填、コンポジットレジンにて仮充填。
  • ④3ヶ月後、歯髄診断もX線像も正常、ダイレクトボンディング。
  • ⑤さらに2年後、現在も無事なまま経過しています。
費用
歯髄保存療法大臼歯(歯頚部断髄) 53,000
(税込58,300)
ダイレクトボンディング(単純) 30,000
(税込33,000)

※歯髄保存療法を行った後の大臼歯の修復治療はクラウンが推奨されますが、今回のこの歯に関しては残っている歯の条件により部分修復可能と判断しました。

※この費用は2024年10月時点での費用のため、詳細は料金表のページを参照してください。

症例⑫ ステップワイズエキスカベーション(AIPC)と歯髄保存療法

歯頚部断髄 症例⑫

「大きい虫歯があるので神経を抜きましょう」と言われた中学生の患者さんで、親御さんが回避する方法を探して来られました。
今回はステップワイズエキスカベーション(AIPC)という、昔からある方法を用いつつ、MTAを使った歯髄保存療法です。最近の論文ではステップワイズエキスカベーションと1visit MTAに臨床的な有意差は無いという結果が出てますが、それでも有効なケースというのは数多くあると思います。理由や詳細は割愛します。

  • ①右下6に非常に大きな虫歯、歯髄に達しない範囲で虫歯を取り、最深部に水酸化カルシウム製剤を置き、セメントで仮充填。
  • ②半年後、歯の神経が少し逃げてくれています。
  • ③左下6に①と同じことをしています。
  • ④半年後、こちらのほうが歯髄の逃げが明らかにみられます。
  • ⑤右下6の本番の歯髄保存療法。露髄を回避できました。
  • ⑥1年後、症状も無くX線像も正常です。
  • ⑦左下6の本番。こちらは歯髄に達したため部分断髄となりました。
  • ⑧1年後、こちらも問題なく経過しています。
費用
歯髄保存療法大臼歯 38,000
(税込41,800)
歯髄保存療法大臼歯(歯頚部断髄) 53,000
(税込58,300)

※この費用は2024年10月時点での費用のため、詳細は料金表のページを参照してください。